風邪をこじらせ、肺の機能が少々衰えているとの診断を受けました。つまり、ひとつの「病名」をいただいた、ということです。
これまで、朝起きるのが辛い日には、「怠けているのではないか」と心の中で葛藤する自分がいました。けれども、病名を告げられてからというもの、「体調が悪いのだから、予定がなければ休もう」と、罪悪感なくすんなり自分に言えるようになったのです。不思議なことに、病名というものが、こうも心を軽くするとは思いませんでした。
その話を社員にしたところ、こんなことを言われました。
「そういう罪悪感があるから、かえって体調も悪くなるんじゃないですか。上司が休まないと、部下だって休みにくいですよ。罪悪感なんて捨てて、ちゃんと休んでください。」
なるほど。確かにその通りかもしれません。でも私は、こう答えました。
「ありがとう。でもね、罪悪感って、他人に対してじゃなくて、自分に対してなんだ・・」
ふと、『葉隠』の一節を思い出しました。
「人の心を見定めようと思えば、病気をしろ。」
苦しい時、追い詰められた時に、その人がどんな対応を取るかによって、真の姿が現れるというのです。
そしてもうひとつ、三島由紀夫の『葉隠入門』には、こんな言葉もあります。
「人は自分が困っている時には人頼みをするくせに、あとではまるで思い出さない人が多いのである。」
人の恩を忘れるような人間にはなってはならない。そう強く思います。
誰かの思いやりが沁みるとき、その優しさを胸に刻み、いつか誰かに返せる人でありたい。
今回の病も、そんなことを教えてくれました。